のんびり寄り道人生

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子どもの自分に会う魔法~大人になってから読む児童文学~

 石井ゆかり著「子どもの自分に会う魔法 大人になってから読む児童文学」を読んだ。

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 酒井駒子さんの装画がとても素敵で、本を読み終わった後も、つい装画を眺めてしまう。当初、甥っ子たちに贈る選書の参考になると思い手に取ったが、石井さんの読書体験を追想しながら自らの幼少時代に思いを馳せることもあった。

 この本で取り上げられている児童文学は、石井さんが子どもの時に読んだ、思い入れのあるものばかりだ。児童文学作家・訳者らが子どもたちに向けて発信した、生きるための大切なメッセージを、もう大人になってしまった元・子どもたちに向けて、石井さんが丁寧に温かい言葉で紡ぎなおしている。大人になるにつれ、だんだん忘れてしまっていた子どもの頃の繊細な心の動きや気持ちが甦ってくる。

 恥ずかしながら昔読んだことがあった本も、石井さんの解説を読むと、「あっ、作者って、そういうことが言いたかったの?」と驚きの連続であった。学校では国語の成績がよく、大学入試前の模試では全国3位になったこともある。だが、論理で何とかなる文章ならまだしも、私はどうもフィクション(物語)が苦手らしい。これまで小説を最後まで読み切れたことは数える程しかない。子どもの頃、ほとんど本を読まなかった(本を楽しんで読む習慣がなかった)せいだと思う。それもあって、今でも他人の気持ちを察したり、自分の気持ちをうまく表現したりすることが苦手だ。子どもの頃、本で登場人物たちの心の動きをシミュレーションして、対人関係の在り方を自然な形でトレーニングしていれば、もう少し楽に生きられただろうに。。今でも現場で失敗して初めて学ぶことが多く、対人問題には随分苦労している。こういう”社会不適応な大人”にさせないためにも、未来ある甥っ子たちには、できる限り本をプレゼントすることにしている。

 石井さんの本のあとがきより一部抜粋:

 原稿のタネはいつも「幼い頃の私は、どうしてこの本を読み、好きになり、繰り返し読んだのだろう?」と改めて考えることから生まれたからです。

 よく考えてみると、私が偏愛した本はすべて、なにかしら「自分と似たものを持った主人公が出てくる」本でした。

 いきおい、自分の生い立ちや子ども時代のことが、原稿に映し出されました。忘れ果てていた幼い頃の心細さ、不安、劣等感などが鮮やかに甦り、幼い日の自分を、大人として慰めてやりたいような思いに駆られました。 

【取り上げられている児童文学】

※以下は、石井さんが紹介された本の版違い、訳者違いも含む。