のんびり寄り道人生

何とかなるでしょ。のんびり生きましょう

韓国ドラマ「春の日」

 以前、ハマった韓国ドラマ「春の日(봄날)」(2005年韓国SBSにて放送)を全編(20話)観た。

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※以下、放送局の公式サイト(SBS & SBS I&M)で黒いボタン「무료보기(無料視聴)」をクリックすると、韓国語(字幕なし)で全編(+広告)視聴できます。

[다시보기] 봄날 1회 : SBS

(1話あらすじ)ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ピヤンド(島)の赤ひげ先生として知られる老医師・ソ先生(シン・チュンシク)の記事が新聞に掲載された。診療費は卵2個、治療費は卵4個と、貧しい島民たちのために長年尽くしているという。その記事を見た、病院長の子息で医師のウノ(チ・ジニ)は、その老医師の元を訪ねることを決意する。ウノの父は老医師の教え子であり、かつてウノ自身も彼のもとで診療行為を手伝っており、公私共に親しい関係だ。

 ウノは10歳で実母と生き別れていた。その後、父の妻となった継母と、うまくいっていない。その息子で同じく医師(外科医)である義理の弟・ウンソプ(チョ・インソン)ともギクシャクした関係が続いていた。ある日、継母が実母との大切な思い出である樹を無断で切ったことを知り、実母の元に行くことを思いつく。『ソ先生なら実母の住所を知っているはずだ』そう確信したウノは老医師に会うため、ピヤンド島に向かった。

 だが、着いたばかりの空港でウノは一人の女性と衝撃的な出会いをする。老医師を手伝うジョンウン(コ・ヒョンジョン)だ。ちょうど用事を終えて帰ろうとしていたジョンウンは、たまたま小さな息子・チョンアを置いて島を離れようとしていた島民の女性を見かけ、空港まで彼女を追いかけ必死に引き止めた。ジョンウンもまた母親に捨てられており、彼女の息子のことが他人事ではなかったからだ。

 ジョンウンは日々、老医師のもとで身の回りのことを忙しなくこなしていた。初恋の先生に「君はモーツァルトのように絶対音感があるよ」と褒められ、ピアノを習い始め、音大への進学を目指す。だが、音大への夢も破れ、オーケストラ団員の選抜オーディションにも落選し、失意のまま母恋しさに実母に会いに行った。だが新しい家族と一緒に幸せそうに暮らす母親は、ジョンウンが誰か分からなかった。深い失望と悲しみ、心の傷を背負って帰ってきたジョンウンは、それ以来、一言も口をきかなくなってしまった。

 かつて老医師の側に寄り添っていた少女の記憶がウノの脳裏に浮かぶが。机に置いた紙のピアノ鍵盤で指を懸命に動かしている少女・ジョンウンだった。彼女に実母の面影を重ねるウノは、彼女の固く閉ざされた心を開こうと奮闘する。そのうち自分の中の苦しみ(実母と生き別れになって以来、母と会うこともできず、幼い身で我慢を重ねながら涙することすらできなかった)に気づいてしまう。積年の苦しみを吐き出しながら、二人は共感し、慟哭する。

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【2〜20話のあらすじは】こちら

 エンターテイメントとして”韓流”ブランドは未だ衰えていないようだ。K-POPも含めると、おばさん(ヨン様)世代だけでなく、アジア地域に限らず世界中で若い人たちも夢中になっているようだ。その宣伝効果なのか、こうして無料で楽しめる公式コンテンツが豊富なのは実にありがたい。

www.kstyle.com

 韓国ドラマを観たことがある人は同調していただけると思うが、とにかく『ない、ない、ない』とツッコミたくなる、ちょっと笑えるような場面、(現実には)ありえない展開が多い。

【韓国ドラマの定番要素】

  • 格差恋愛
  • 頻繁に起こる偶然
  • 病気・事故
  • 整合性の詰めの甘さ
  • 業界の常識についてリサーチ不足(その結果、徐々に現実味が失われる)
  • 壮絶な人間模様
  • 年功序列
  • コミカルな道化役
  • 意地悪な継母
  • 男女問わず激しい感情表現(突然キレる、溢れる涙、本気のビンタ、手つなぎ、ハグetc.)
  • 男女問わず強い調子の言葉の応酬
  • どんでん返しの連続etc.

 とりあえず、ありえないと思ってもドラマの世界にどっぷり浸かってみるのがポイントだ。良作であれば最後(最終話)に必ずスッキリさせてくれる(はずだ)。本作は1話1時間×20話と長丁場だ。ジェットコースターとメリーゴーラウンドのような展開に目をチカチカさせながら、今さきほど”異世界”から帰ってきた。

 本作の魅力は、兄弟でヒロインを奪い合うストーリーにある。恋愛がテーマであり、タイプが異なる二人のイケメンたちに、田舎の垢抜けない実直なヒロインが翻弄される(2回目じっくり観たところ、むしろ翻弄するのはヒロインかも?と思える)。一時的な流行、トレンディドラマの華やかさに疲れた人たち、”運命の赤い糸”を夢見る人たちは、ピュアな大人の恋愛模様にドキドキ・ハラハラしながら、我が身を重ねてみよう。良く練られたセリフの数々が現実の恋愛観を変えてしまうかもしれない。

 何より本作に惹かれるのは、根本に伏流する家族を巡る問題である。例えば実母に捨てられ、再会しても親子の情を交わせなかったジョンウンのケース。実母と生き別れになり、その後再会した果に死別してしまったウノのケース。実母の元で甘やかされて育てられたものの成人してなお”良い子”であることを強いられ支配され続けるウンソプのケース。実母に一度は捨てられながらも、その後ウンソプの助けにより親子の暮らしを再開させたチョンア(子役)のケース。父親に暴力を振るわれ、頭に手術跡を持つミンジョン(ハン・ゴウン)のケース。他にも父と息子、兄弟たちは激しく衝突しながらも、自らの思いを語りながら、互いを慮りながら最後には家族愛によって和解していく。

 初めて本作を観た時、ヒステリックなウンソプの母親のセリフに既視感を覚えた。興奮のあまり、すぐに母にDVDをプレゼントした。かつて母から同じような”毒”を吐かれたことがあったので、喧嘩にならないよう間接的に自省を促す”メッセージ”を伝えようとしたのだ。だが、メッセージは正しく伝わらなかった。母は、主人公たちの性格が明るく、展開がサクサク進むようなコメディ系のドラマが好きなので、本作の内容は重く地味過ぎたようで、DVDは最後まで観てもらえなかった。。。誠に恥ずかしながら若い頃は何でもかんでも自分の手に負えない”毒親”のせいにして母から逃げてきたが、さすがにもう「親が悪い」「社会が悪い」とへそを曲げていられる歳ではない。。「自分が成長しないことを誰かのせいにしてはいけないなぁ」しみじみそう思う。。

 私が里親や親子問題に関心が高いのも、まさに自分自身の問題だからなのだろう。話が飛躍するようだが、もしタイムマシーンで過去に戻ることができるなら、ぜひ大戦後間もない、母が暮らしていた小さな村に行ってみたい。そして少女の母としばらく交流してみたい。彼女が当時何を想い、どんな風に育っていたのか間近に見ることができるなら、私はもっと”良い娘”になれるかもしれない。

 母方の祖母は小さな村の中にあって珍しく学を身につけた教養人であったそうだ。しかも手先も器用で家事は何でも完璧にできたという。生まれたばかりの娘(私の母)の顔を見ながら「あぁ、この子は何て可哀想なんだろう…」と嘆きながら病気を患って亡くなったそうだ。そんな生母の優しさや愛情に触れることもなく、間もなく継母が家にやってきた。父の目が届かない場所で、その継母にとことん虐められ、ろくな食事もさせてもらえなかったという。それでも生命力あふれる少女は夜の台所にこっそり忍び込んで生米を食んでいたそうだ。そんな悲しいエピソードの数々を母から聞いた時は、さすがに話半分では聞いていられなかった(ま、”演技派女優”の我が母は、なかなか悲劇のヒロインを上手に演じることがあるので、単純な私が騙されている可能性も捨てきれない)。ただ、やはり成長期に十分には食べさせてもらえなかったのだろう。いびつに小さく育った母の身体は、若い頃から常にあちこちが痛むらしい。医師の診察にかかっても大きな病気は見つからないので、愛情や栄養に飢えて育った子供たちが持つストレス性のものではないかと思っている。誰に頼ることもできず、心から信じられる大人が周囲にいない。そんな極度のストレス状態が常態化したら、誰でも見えない病を引き起こしても不思議ではない。年老いた今も時に”不信感”のオーラを漂わせている母の強い眼差しを見つめるたびに心がしくしく痛む。。もし子供の頃の母を私が育てることができたら…ふとそんな妄想がよぎったが、やがて介護という形を借りて”その時”はやってくるのだろう。

 『私が大人にならなければ…(溜息)』そう頭では分かっていても、いざその時に果たして”大人の行動”ができるだろうか?正直に言うと、かなり自信がない。。親子で価値観がすれ違う時、今もつい母の前では子供(悪ガキ)になってしまう…。だけど本作の登場人物たちのように、ゆっくりでいい。逡巡してもいい。感情を吐き出すことを躊躇せず、継続的なコミュニケーションを諦めてはいけない。そんな励ましのメッセージをもらった。