自分の時間を取り戻そう
ちきりん著『自分の時間を取り戻そう ゆとりも成功も手に入れられるたった1つの考え方』を読んだ。
表紙裏には「ちきりん流・自分の時間を取り戻す具体的な方法」と銘打って、幾つか具体的な方法が提示されている。(以降、『自分の時間を取り戻そう』より引用)
まずは働く時間を減らそう!
- 1日の総労働時間を制限する
- 業務ごとの投入時間を決める
- 忙しくなる前に休暇の予定をたてる
- 余裕時間をたくさん確保しておく
- 仕事以外のこともスケジュール表に書き込む
全部やる必要はありません!
- 「すべてをやる必要はない!」と自分に断言する
- まず「やめる」
- 「最後まで頑張る場所」は厳選する
- 時間の家計簿をつける
これだけ読むと、ありきたりの”時間節約術本”に見えなくもないのだが、マーケティング戦略に長けた社会派(カリスマ)ブロガー・ちきりん氏のことだ。ポイントを絞ったアピールによって想定読者である忙しいビジネスマン・ビジネスウーマンの興味をひいているのだろう。あるいは読者の選書時間の節約というサービス精神なのだろうか?余計なお世話だが、これだけズバリ要点が書かれていると、本文を読まずに(買わずに)本を閉じる人もいそうだが…。
閑話休題。内容に入ろう。本書には「忙しすぎる」ホワイトカラー4人が登場する。
- デキる男 正樹(早期昇格を実現させた管理職)
- 頑張る女 ケイコ(育児とフルタイムワークをこなすキャリアママ)
- 休めない女 陽子(就職氷河期世代の非正規雇用から転身したフリーランス)
- 焦る起業家 勇二(大学生の時に始めた事業を卒業後に株式化した経営者)
彼らは、ちきりん氏との対話を通して時間に関する意識を改革していく。やがて、
- さらにデキる男 正樹
- 吹っ切れた母 ケイコ
- ラオスにて休暇を楽しむ 陽子
- 世界を目指す経営者の視点を持った 勇二
となり、彼らは自分の時間軸を取り戻していく。どうにもならないと諦めていた”忙しさの呪縛”から解放され、彼らは人生の軌道を修正していく。何とも出来過ぎたサクセスストーリーだが、誰にでも思い当たりそうな事例を多用して、(とりわけ都会で暮らす)現代人の思考をうまくパターン化している。
ちなみに、ちきりん氏は覆面ブロガーとしてだけでなく、実名の伊賀泰代氏としても幅広く活躍しているようだ。本書にも、前職のMcKinsey and Company, Japanで鍛えられたコンサルタント、採用・人材育成マネージャー時代の豊富な実体験が盛り込まれているのだろう。幅広い読者を前に”生産性向上”というキーワードが繰り返し強調され、とても読みやすい啓蒙書になっている。
序章に登場した4人が共通して抱えている本質的な問題、それは、「生産性が低すぎる」ということです。(略)
ところがなぜかこの「生産性」という言葉は、本来の意味よりはるかに狭く解釈され、その重要性も正しく認識されていません。(略)
でも本来の意味での生産性とは、仕事だけでなく家事から育児、趣味からボランティア、勉強に人付き合いからコミュニケーションに至るまで、生活のあらゆる場面においてその成果を最大化するための鍵となる概念なのです。
それからもう一つ、私がこのタイミングで生産性について本を書こう(書かねば!)と考えた重要な理由を挙げておきたいと思います。それは今、社会が急速に「高生産性社会」へとシフトし始めているということです。(略)
今後、私たちの暮らす社会では、これまでに経験したことがないほど速いスピードで、しかもあらゆる場面でこの高生産性シフトが進みます。(略)
私が今、生産性について理解しましょう、生産性を上げましょうと勧める理由は、さっさと仕事をすませ、効率のいい生活を送りましょう、と言いたいからだけではありません。ものごとを生産性という視点で見るクセをつけないと、これからの社会において正しい方向判断ができなくなると思うからです。(略)
職業選択を含めた自分の人生の選択においても、仕事の進め方についても、そして社会のあり方を考えるときにも、ゼロよりマシなものに対して「価値がある」と判断し、貴重な時間やお金を投入していては、いくら時間やお金があっても足りません。結果として「お金が足りない。時間が足りない」と愚痴りながら生きていくことになります。(略)
大事なことは日々生産性を意識し、仕事や生活の生産性を高める方法をトライアンドエラーで身につけていくことです。
とは言え、自力ではどうしようもない事情もあるし、自分の意志でどうにもならない場面もある。だからこそ「何が何でも生産性を上げよう」というのではなく、「生産性という視点で見るクセをつけよう」と提言しているのだろう。
お金と時間は、両方とも”見える化”しよう
大半の人が「希少だ=いつも足りない!」と感じているお金と時間。どちらも重要な希少資源ですが、このふたつには大きな違いがあります。それは「お金は見えやすいが、時間は見えにくい」ということです。(略)
お金はお札という形でも、貯金口座の残高という形でも数字として目で確認することができます。(略)
ところが時間に関して有限感を持つには、ちょっとした工夫が必要です。半年前の自分が20歳ちょうど、今の自分が20歳と6ヶ月であっても、大半の人は「半年分の時間がなくなった!」と感じたりはしません。見えないものについては「どれほど減ったか」を自然に感じとることが難しいのです。(略)
人生のなかでは「今は時間よりお金が大事」というタイミングも、もちろんあります。(略)
一生ずっと「お金はそこまで大切ではない」と言い切れる人は、資産家などごく限られた人だけです。でも一生ずっと「一番大切なのはお金だ」という人も、同じようにごく少数のはずです。
多くの人は、そのときそのときの自分の生活にとって大切なもの、もっとも貴重なものが異なります。その変化をしっかり意識しないと、知らないうちに大事なものを失ってしまうのです。
お金も時間も最大限に活用しよう
お金と時間は個人にとってもっとも貴重な資源です。だから(そのどちらかがより重要かという、前節での話とは別に)そのいずれもについても、できる限り大切にすべきです。
そして時間を大切にするためにもっとも気をつけるべきことは、自分の時間を簡単に売らないことです。
自分ではマイペース(自分の時間)で生きているつもりであったが、私もまだまだ認識が甘かったようだ。。本書を読み進めながら、いろいろと身につまされる事が多かった。お金については(あまり働きたくないので)なるべく節約している方だが、時間感覚の鈍さについては図星だった。。。
現在の労働環境には満足しているものの、担当しているプロジェクトが勢いを増しているので、今は朝から晩まで忙しなく働いている。仕事にやりがいは感じるが、身体の不調も目立ってきた。。。
何も希少資源は「お金」と「時間」に限らない。生身の身体で働く限り、「健康」というのも重要だ。これらをどうバランス良く使うのか?時には誰かの助けも借りながら、便利な道具があればそれらを使いながら、時に手を抜くこと・(全部はできない、全部をやる必要はないと)諦めることも必要なんだよなぁ。。のんびり”寄り道”を愉しむつもりが、メインロードを疾走する羽目になってしまった。。とりあえず自分の時間を”安売り”しないように生活を見直してみよう。